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『坂本君は見た目だけが真面目』監督・大工原正樹×脚本・鳥井雅子対談!

映画美学校が、脚本家コース受講生のオリジナルシナリオを映画化する企画の第2弾で製作された本作。同コース2期生・鳥井雅子が、「もしもスティーブ・ジョブズが中学生だったら」という出発点から脚本を描き、監督・大工原正樹が熟練した演出で映画化を実現。監督・大工原と脚本・鳥井に『坂本君は見た目だけが真面目』ができるまでを語っていただいた。

もしもスティーブ・ジョブズみたいな中学生がいたら—。(鳥井)

LOAD SHOW(以下、LS):『坂本君は見た目だけが真面目』の脚本はどのようにして決定したんですか?
大工原:この企画が脚本コースの生徒が書いた本を1本選んで撮るというものだったので、僕と高橋洋さんと篠崎誠さんが選考委員をやって、最終候補に残った10数本のシナリオを読んでこの『坂本君は見た目だけが真面目』に決定しました。
LS:鳥井さんは大工原さんの教え子ということになるんですか?
鳥井:いえ、私は脚本コースの生徒で、大工原さんはフィクション・コースという監督になりたい人のコースで教えてらっしゃるので、それまで面識はなかったです。まさか選考委員の大工原さんが監督になるとは思ってもいませんでした。
LS:第1弾の『ただいまジャクリーン』(2013)は映画美学校OGである大九明子さんが監督をされていましたが、今回は選考委員である大工原さんが監督を務めたのはなぜだったんですか?
大工原:今回も映画美学校のOB・OGが監督をやるだろうと思っていたんですよ。そしたら美学校の事務局から、今回は予算との兼ね合いが難しいため、全体をしきれる人に監督してほしいということで僕に話がきたんです。『坂本君』は8割学校が舞台なので、これほどの低予算では大変だよねって話は当初から出ていたんですよ。自分が選考に加担しているということもあるし(笑)、もともと面白いと思っていた脚本だったので美学校から製作を委託される形で、僕個人の自主映画として撮ることになりました。
鳥井:企画の条件が、予算100万円で尺は30分というものでした。学校なんてどこにでもあるし、予算的に収まるだろうと思っていたら相当苦労されていたので、申し訳なかったです。
大工原:そう、学校ってキャストが多いから難しいんですよ。だから今回はプロデュースが1番大変でした。演出は二の次で、赤字を出さない!というちょっとせつない方向にエネルギーを傾けていましたね(笑)。
LS:坂本君のキャラクターモデルはスティーブ・ジョブズだとお聞きしました。
鳥井:ちょうどジョブズの伝記を読んでいて、彼は大学を中退していますが、在学中、出たい授業だけ受けていたというのを読んで、それを日本の中学生がやったらどうなるだろうか、というところから構想しました。
大工原:この話を発想した最初の頃からジョブズみたいな人にしたいと思ってたの?
鳥井:ジョブズみたいな人物というより、授業に出たり出なかったりという行為の方が先にきました。ジョブズまんまというわけではないんですけど、あまりに性格がはずれないようにはしました。
LS:鳥井さんの物語の発想はいつもどんなところからくるのでしょう?
鳥井:初めからあまりないかなっていう設定を探しています。
大工原:今自分が描こうとしているものが、これまで作られてきた映画の何に似ていて、どこが違うかってことはあまり意識しないで書いているホン(=脚本)という感じがしました。
鳥井:私はそこまで映画を観ているわけではないので、最終的に何かに似ちゃう可能性はあるとは思うんですけど、自分の知っている中では今までなかったものを書きたいと思っています。

シリアスに書いたつもりが、完成作品はかなり軽快なものでした。(鳥井)

LS:『坂本君』を拝見させていただいて、かなり軽快な印象を受けたんですが、描きようによってはシリアスな内容だなと思いました。脚本の時点でもコメディタッチで書いていたんですか?
鳥井:いえ、脚本の段階ではそこまで笑える感じで書いたつもりはなかったです。おそらく読まれた方もそこまで軽快な印象は持たないと思うんですけどね。書いている方としてはもっとシリアスなつもりだったんですけど、出来上がったらこうなってました(笑)。
大工原:女教師・聡子が過剰に坂本の行動に干渉する。坂本の方も同じくらいかたくなに自分のやりたいことを貫こうとする。そのやりとりが面白いなと思ったんだけど、読みようによっては陰湿に見えてしまうんですよね。二人のぶつかり合いも、過剰に陰湿に受け取られかねない。それは見ていてつらいものになるんじゃないかと思ったので、なるべくそうとは気付かせないように、二人が面白く見えてくるように撮ろう思いました。
鳥井:陰湿って言われたらそうなんですかね。実際こういう軽快な作品になったのを観て、何も違和感なく受け入れられるような不思議な体験をしましたね。
LS:脚本はお二人で詰めていったんですか?
大工原:高橋洋さんが脚本監修だったので、高橋さんと鳥井さんの個人授業みたいな時間が多かった。だから僕は要所要所で口出すくらいの感じで、2ヶ月くらいかけて直しました。
鳥井:脚本直しをすること自体初めてだったので、最初は素人が書いたホンだねと言われて、どんどん直していきました。
LS:大工原さんから難しい注文とかはありましたか?
大工原:聡子に歌を歌わせたいって言ったとき鳥井さんはかなり抵抗しました(笑)。
鳥井:歌詞を書いてと言われたときにはどうしようかと思いましたね。歌う理由がわからないと言って(笑)。
大工原:そこに理由はいるのかと(笑)。まあ、ちょっとラストが尻すぼみな感じがしたので盛り上がりがほしいなと思った。さらに「私、学生時代バンドやってたの」っていうセリフがあったので、じゃあ歌わせようと思ったんだよね。
鳥井:何気ない一言がえらいことに(笑)。
大工原:あんなセリフ書くんじゃなかったって頭抱えてたからね(笑)。
LS:実際そのシーンをご覧になっていかがでしたか?
鳥井:歌詞はけっこう頑張って書いたんですけど、ちょっとしか使われてなかったです(笑)。ホンを書いているときは、歌を挟み込む余裕なんてどこにあるんですかという感じだったんですけど、完成したものを観たら全く違和感はなかったです。

この二人の頑固さって鳥井さんが持っている頑固さなんですよ。(大工原)

LS:聡子と坂本君という二人ともくせの強いキャラクターですが、どんなバランスで撮ろうと考えていましたか?
大工原:撮ることになってから読んでいて気付いたんですけど、この二人の融通のきかなさっていうのは、けっこう近いものがあるなと。近いからぶつかるし、近いから解決に持っていけない。脚本直しをやっているときに、この頑固さって鳥井さんが持っている頑固さだということにも気付いたわけですよ(笑)。鳥井さんの中にあるものがどっちにも反映されているなと思って。
鳥井:私、そんなに頑固でしたか(笑)。
LS:話している感じではわからないですけど、鳥井さんがモデルだったんですね(笑)。キャスティングについてお聞きしたいのですが、聡子は怒っているシーンが多かったですけど、それを陰湿に感じさせない藤本泉さんはこの役にぴったりでしたね。
大工原:それは聡子役を選ぶポイントでしたね。悪態ついてもいやな感じにならなくて、華がある人っていうことで藤本泉さんを選びました。こないだ三宅唱くんが作った予告編見直していたら、あれだけの罵倒を2分に圧縮するとけっこうひどいよなって(笑)。まあ撮る前からそう思っていたんですけど、聡子はちょっと異常(笑)。
鳥井:それが私の分身だとも言われてしまってますからね(笑)。
大工原:ははは。でも鳥井さんが坂本の異常性は書いていて自覚があったけど、聡子の異常性っていうのはできたものを観て気付いたと言っていて、本人気付いてなかったの?ってことに驚きだったんだけど(笑)。
鳥井:いや、より圧倒的に異常なのは坂本のつもりで書いていたんですけど、実際に観たら聡子がかなりいっちゃってたので、この人もおかしかったんだって思いましたね(笑)。
LS:その聡子の異常さっていうのは坂本とバランスをとって同じくらい異常にしたんですか?
大工原:いやいや。鳥井さん以外はホン読んだときに聡子の方異常だって気付いていたから、あえて聡子を異常にしたってことはないですね。
鳥井:えー、そうだったんですか。
LS:今回鳥井さんはご自身の脚本が映画化するのは初めてですよね。完成したものを観て本の段階と違う点もたくさんあったと思います。鳥井さんが1番好きなシーンはどこでしたか?
鳥井:自分の中であまり映像をイメージできていなかったので、オープニングのこれ面白そうな感じがする!っていうところはとても好きです。ぜひたくさんの方に観ていただきたいと思います。
LS:低予算の中での大工原さんの渾身のプロデュースと監督、実は鳥井さんの分身である聡子と坂本。ぜひとも劇場でご覧いただきたいと思います(笑)。本日はありがとうございました。
聞き手・構成・写真:石川ひろみ
大工原正樹監督作品『坂本君は見た目だけが真面目』
2014年3月15日(土)よりオーディトリウム渋谷、映画美学校エクランにて上映!
■『坂本君は見た目だけが真面目』公式サイト
http://www.sakamoto-movie.com/
■上映スケジュール
3月15日(土)〜21日(金) オーディトリウム渋谷での上映
3月22日(土)以降は同ビル地下一階 映画美学校エクランでの上映(23日(日) 休映)
詳細はこちら→ http://a-shibuya.jp/archives/9046
■料金
特別鑑賞券(両館共通)=900円(販売中)
当日券=1000円均一
■イベント
3月15日(土)上映前:出演者、監督による舞台挨拶【登壇者(予定/敬称略)】藤本泉、伊藤凌、ジェントル、大工原正樹監督、鳥井雅子(脚本)
3月16日(日)大工原正樹監督作品『純情No.1』『恋の季節』併映
3月17日(月)脚本コース第1期初等科作品『ただいま、ジャクリーン』(監督:大九明子)併映
3月18日(火)大工原正樹監督作品『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』併映
3月20日(木)上映後:「坂本君が出来るまで」高橋洋(脚本家)、小中千昭(脚本家)、大工原正樹監督、鳥井雅子(脚本)
3月21日(金)上映前:出演者、監督による舞台挨拶
『坂本君は見た目だけが真面目』
©2014 THE FILM SCHOOL OF TOKYO
【Story】中学校教師の聡子は、出たい授業にしか顔を出さず、必要ない授業だと思ったら家に帰ってしまう生徒・坂本君に頭を悩ませていた。出たい授業への出席率は良く、勉強もできる優秀な生徒だったが、説得しても屁理屈で言い負かされ、最近では他の生徒も共謀して坂本君が授業をサボることを助け出す始末。ある日、アポなし家庭訪問を試みた聡子は、坂本君が授業をサボって家でロボット作りに励んでいることを知る。生徒指導に燃える聡子は、あきれる坂本君の誹りにもくじけず、授業に出るように説得を続ける。ある日、あまりのしつこさに坂本君がついに反撃を開始!引くに引けない聡子の教師生命は?!ついにクラスを巻き込んで2人のバトルが始まる!!
監督:大工原正樹/脚本:鳥井雅子/撮影・照明:四宮秀俊/録音・整音:光地拓郎/音楽:長嶌寛幸/編集:和泉陽光/助監督:地良田浩之/制作担当:鈴木英生/ヘア&メイク:永江三千子/出演:藤本泉、伊藤凌、ジェントル、宮田亜紀、よこえとも子、大久保了、美輪玲華 /2014/日本/57分/Color/HD/製作・配給・宣伝:映画美学校/
  • 『大工原正樹(だいくはら・まさき)』
    1962年生まれ。廣木隆一監督、鎮西尚一監督の助監督などを経て監督に。近年の主な作品に『赤猫』(04)、『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』(11)、『純情№1』(12)などがある。現在、映画美学校フィクションコース高等科講師。
  • 『鳥井雅子(とりい・まさこ)』
    1982年生まれ。兵庫県出身。スクリプトドクターという言葉を知った事をきっかけに、2012年映画美学校脚本コース2期初等科に入学。在学中に作成したシナリオ「坂本は見た目だけが真面目」が映画美学校コンペにて映像化作品に選ばれる。現在同脚本コース2期高等科に所属。