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#05【映画祭レポート】瀬戸田映画祭vol.3

広島県尾道市瀬戸田町で毎年夏に開催される瀬戸田映画祭の魅力を紹介―

いま密かに映画スポットになっている“瀬戸田”

瀬戸内海の真ん中近くに浮かぶ、生口島(いくちじま)と高根島(こうねじま)からなる瀬戸田という町をご存知でしょうか?日本画家の平山郁夫 が生まれ育った町で、最近はサイクリングスポッ トとして人気を集めている町です。しかし、ここ瀬戸田は今密かに“映画の島”としても広まってきています。

昨今、日本中で多くの映画祭が開催されその数は大小合わせて100以上あるといわれていますが、瀬戸田でも毎年夏になると映画祭が開かれています。その名の通り「瀬戸田映画祭」。今年で3回目の開催になる当映画祭にぼくは毎年足を運んでいるのですが、年々その認知が広まってきているように感じます。

瀬戸田映画祭を主催するのは瀬戸田町出身の映画作家・川本直人さん。ベルリン国際映画祭短篇部門に2年連続で入選した短篇作品『UZUSHIOシリーズ』や『カトレアの爆撃機』といった、セルフドキュメンタリー、アニメーション、実験映画、劇映画と多岐に渡るジャンルの映像作品を制作する作家で、当映画祭も彼が主催するだけあって、多くの映画祭とは少し嗜好が違うユニークな内容となっています。

瀬戸田映画祭の3つの特徴

1:上映スタイル
瀬戸田映画祭の特徴のひとつは、全ての映画を野外で上映する、その鑑賞環境にあります。高校の中庭、廃校となった小学校の海沿いのグラウンド、“西の日光”とも呼ばれる耕三寺にある「未来心の丘」という広さ5,000平方メートルにもおよぶ白い大理石の庭園など、瀬戸田を活かした空間で巨大スクリーンや大理石に映写される映画は、映画館で観るようか鑑賞体験とは異なり、「瀬戸田」というレイヤーが挟まれた独特な映画体験になります。

2:作品ラインアップ
作品のラインナップは、商業ベースでは上映される機会が少ない、実験映画やアブストラクトアニメーション、自主制作映画といった非商業作品が積極的にプログラムされます。

3:町の景観と観光
しまなみ街道が開通して以来、サイクリングスポットとしても人気を博す瀬戸田では映画祭と一緒にレンタル自転車で瀬戸内の清々しい景観を楽しむことが出来ます。また、瀬戸田の波の静かな美しい海岸での海水浴や名産のレモンやタコなど食を堪能するなど、ひと夏の体験として申し分ない環境が揃っています。

“観る”ではなく“体感”する映画祭


これら瀬戸田映画祭の魅力を総合すると「観て楽しむ」というよりは「体感して楽しむ」ことに特化した映画祭であることがわかります。また、このおもむきは、非商業映画と非常に相性が良いのではないかと考えられます。

実験映画や自主映画というのは、少なからず「映画の文脈」または「映像の芸術的価値」に興味を持っていなければ楽しめないものです。

しかし、瀬戸田映画祭のように野外の大きなスクリーンで鑑賞することで、映像が持つ美しさや力強さをキャッチできる感度が高まり、言葉ではなく、感覚的に映画を吸収することができます。さざ波や虫の鳴き声が小さく聞こえ、空を見上げると透き通った美しい星空、そのような空間で大きなスクリーンに映写される映像は「光」という原始的な映像の説得力を持つでしょう。つまり、映画が空間全てを巻き込んだ“現象”になるのです。

日本国内では、瀬戸田映画祭で取り扱われるようなカテゴライズしづらい非商業映画は、ニッチな分野として一般的に観られることはありません。しかし海外の多くの国では(カナダ、ドイツ、フランス、チェコなど)1つのジャンルとして商業映画と同じように認識されています。

川本直人さんは映画祭とは別に、瀬戸田の小学生向けに映画制作のワークショップなども開催されているそうなのですが、もし今後、それらの活動が実り瀬戸田が「映画芸術」に対してリテラシーの高い地域になり、映画祭の規模も拡大していけば、世界中の映像作家がこぞって集まる映画祭に発展していくでしょう。

瀬戸田映画祭のこれから


今年の8月8日~10日の3日間行われた第3回瀬戸田映画祭は連日場所を変えて上映が行われました。今後はさらに上映箇所を増やして、空間ごとに適した映画を上映していくそうです。映画祭を通して瀬戸田ごと楽しめる構想になっているのでしょう。しかし、規模を拡大すればするほど、必要になっていくのは資金。これから、どのように資金調達をするのか、それは映画祭の内容にも絡んでくる重要な問題です。

また今後、映画祭の1つの側面でもある、開催地のイメージアップや観光振興、町おこしとしての要素をどのように強めていくかも気になる点です。映画祭のために主要都市からアクセス便を作ったり、瀬戸田の名産品を楽しめるフードコートを用意するなど、映画を通してより“瀬戸田”を満喫できるような環境があれば、映画祭の価値がまたひとつ増えるはずです。

朝は自転車に乗ってしまなみ街道を悠々サイクリング、昼は海水浴に、島のおいしいフルーツを堪能して、夜になったら映画を観て、瀬戸田の御馳走を囲んで語り明かす。まさに夢のような時間を体感する映画祭。

個人主催の映画祭がたった3年で、町民から受け入れられ、対外的な認知も得られつつある瀬戸田映画祭の今後に目が離せません。

映像は、瀬戸田小学校でのワークショップの際に制作した川本直人監督作品『たとえば』
瀬戸田映画祭 vol.3
■開催日
2014年8月8日(金)~10日(日)
■開催場所

広島県立瀬戸田高校(住所:広島県尾道市瀬戸田町名荷1110-2)

旧南小学校校庭(住所:広島県尾道市瀬戸田町荻2576-1)

耕三寺博物館「未来心の丘」(住所:広島県尾道市瀬戸田町瀬戸田553-2)

■上映作品
8月8日(金)(会場:瀬戸田高校)19:00- 開場 19:30- 上映

【入場料:無料】

嶺豪一監督作品 『故郷の詩』(2012年/日本/カラー/HD/71min)

島村和秀監督作品『あおいちゃんの星座』(2014年/日本/カラー/HD/45min)

8月9日(土)(会場:旧南小学校校庭)19:00- 開場 19:30- 上映

【入場料:¥500-(中学生以下無料)】

園子温監督作品『自転車吐息』 (1989年/16ミリ/カラー/93min)
8月10日(日)(会場:耕三寺博物館 「未来心の丘」)19:00- 開場 19:30- 上映

【入場料:無料】

川本直人監督作品『渦潮』(2012年/日本/カラー/8mm/7min)

川本直人監督作品『渦汐』(2013年/日本/カラー/16mm/10min)

木村達人監督作品『stone meditation』(2013年/日本/カラー/5min)

山本圭祐監督作品『疾走ラブレター』(2013年/日本/カラー/16mm/6min)

■公式サイト
http://katoreak.wix.com/setodafilmfestival
■公式Facebook
https://www.facebook.com/setodafilmfestival
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♯28「映画と私」川本直人(映画作家)

http://culture.loadshow.jp/interview/eigatowatashi-naoto-kawamoto/
■川本直人 今後の予定
公開制作会
日時:2014年10月12日
場所:耕三寺博物館 未来心の丘
参加費:高校生以上500円/中学生以下無料
詳細ページ:http://www.kousanji.or.jp/event/miraishin14th/miraishin14th.html
写真:小林修
テキスト:島村和秀
  • 『川本直人(かわもと・なおと)』
    1988.9.26生まれ。瀬戸内にある瀬戸田(生口島)で育つ。高校卒業後上京。多摩美術大学入学。 海を撮影したフィルムにシネカリクグラフィーを施し、時間の拒 絶を試みた『渦潮』(8mm)が第62回べルリン国際映画祭短編部門に入選。翌年、続編である 『渦汐』(16mm)も第63回べルリン国際映画祭短編部門に入選。その後「小津国際短編映画 祭」(イタリア)、「Festival Imago」(キューバ)、「等々力国際映画祭」(東京)等各地で招待上映される。 日記映画からはじまり、ドキュメンタリー、アニメーション、キネカリグラフィーと横断的な手法で作品をつくる。また海辺等で野外上映を行う『瀬戸田映画祭』 を故郷で主催するなど、瀬戸内をテーマにした表現活動を多くおこなっている。