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Sierror!〽(シエラ!)がゆく!vol.1 花岡無線電機株式会社

Sierror!〽とは、映像と音の未知の可能性を探るために、加藤直輝(映画監督:『アブラクサスの祭』)と増田圭祐(裏道)で結成された、ノイズミュージックを主として展開する音楽ユニット。今回の企画は音響機材フリークでもある二人が、創業88年の放送用音声設備機器メーカー、花岡無線電機株式会社を訪問見学し、花岡克己社長のレクチャーを受けるというもの。最先端の機材が置かれたデモルームにSierror!〽のノイズミュージックが鳴り響く!

※ノイズミュージックとは、ノイズ(騒音)を素材とし、表現される音楽ジャンルのひとつ。日本の代表的なノイズバンドとして「非常階段」など。

まずご紹介をさせていただきますと、加藤直輝監督は2010年に『アブラクサスの祭』(主演:スネオヘアー、ともさかりえ)で商業映画デビューを果たしました。増田圭祐さんは裏道というバンドを中心に活動をされていますが、お二人は立教大学の先輩後輩でいらっしゃるのですが、当時から現在に至るまで、加藤監督作品の音楽、原案を手掛けるなどしておられます。実はお二人は2011年にSierror!〽というノイズバンドを結成しておりまして、今回はその機材大好きなSierror!〽のお二人が花岡無線電機さんを訪問したら面白いのではないか、花岡無線電機デモルームにノイズミュージックが鳴り響いたらさぞかし楽しいのではないか!という、かなり個人的趣味に走った企画を立てさせていただいた次第です(笑)
一同:(笑)
Sierror!〽:今日はよろしくお願いします。
花岡:こちらこそよろしくお願いします。機材がお好きだというお話は伺っていましたので、デモルームだけでなく部品庫にもご案内したいと思います。引き出しを空けると“つまみ”とか“コネクター”とか色々入っていますから、機材好きの方にはたまらないかも知れませんよ(笑)
増田:おおっ!
それはまずいんじゃないですか(笑)
増田:いや~ありがとうございます!楽しみですね~(笑)
ではその前に(笑)まずは花岡社長に花岡無線電機株式会社についてのレクチャーをお願いできればと思います。
花岡:そうですね、どういうことをやっているかと言いますと、音声卓を始めとした放送局向けの製品を製作している会社です。更にスタジオのシステム設計から施工までも手掛けています。最近は外国の音声卓も入ってきていますから、それを日本の放送用の仕様に合うようにシステム構築をするといったこともおこなっていますね。主な取り引き先としては、NHKさんや全国の民放さんで、有名なスタジオですと、渋谷のTOKYOFMスペイン坂スタジオや、TBSラジオの生放送スタジオなどで弊社音声卓が使われています。ラジオスタジオ以外にもテレビスタジオもやっているんですが、その場合でも音声部分の仕事をしています。MA(Multi Audio)スタジオなんかもそうですね。映像作品全般に音を付ける作業をおこなうスタジオです。
MAという言葉は映画の現場でも良く耳にします。
花岡:そうですね、まさにそのMAです。弊社はメーカーですので、サービスや保守ももちろんおこなっています。放送局の仕事で音声と関係ないところだとモニター棚を作ったりもしますよ。
花岡:では次に弊社の歴史について簡単にお話させていただきます。創業は大正時代、NHKのラジオ放送開始とともにはじまったという感じですね。今年で88年となります。
加藤:花岡社長は何代目なんですか?
花岡:私は四代目で、曾祖父が開業しました。
加藤:こちらの本社建物はいつからですか?
花岡:昭和53年(1978年)です。まさに我々が生まれたくらいの時代になりますが、NHKさんが渋谷に移ったので近くにということでここに移ってきたんです。その前はNHKさんが当時愛宕山でしたから、新橋に会社がありました。その場所は現在、放送博物館になっています。
花岡:以上会社案内に沿ってご説明をさせていただきましたが、最後に取扱い製品のご案内をさせていただきます。まずは、デジタル音声卓です。お渡ししたカタログに掲載されている09Dという製品が、この後ご案内するデモルームに設置してあります。一口に音声卓といってもライブ用のPA卓からMA卓など幅広くあるわけですが、弊社では放送用に特化しています。カタログの製品をそのまま納品しているだけではなく、チャンネル数や入出力の数など、お客様の要望によってカスタマイズを施し、構成していくわけです。スタジオの仕様に合わせた音声卓を製作することができます。
増田:(カタログを眺めながら)これはなんですか?
花岡:残響制御パネルです。この製品はもしかしたら映画なんかでも使えるものかもしれませんが、簡単にご説明しますと、スピーカーから直接出た音と跳ね返ってマイクに入ってきた音を分離するんです。
増田:えっ?
花岡:これに関してはデモルームで実際試してみた方が分かりやすいかも知れません(笑)
(お茶を出していただき)音声卓デザインのコースターがかわいいですね!
花岡:ありがとうございます。これは昨年作ったノベルティーです。お客様に差し上げると評判がいいんですよ!珈琲を飲んだときにでも弊社のことを思い出して貰えたらと思っています(笑)
加藤:花岡社長も音楽はかなりお好きなんですよね?
花岡:そうですね。ライブハウスへもよく行っています。弊社ではTACAMですとか、SENNHEISER、CANAREなどライブハウスでも使われるメーカーの代理店も行っていますので、ライブを見にいくだけでなく、弊社から製品を購入していただくなどといったお付き合いも増えてきていますよ。
花岡:ではそろそろ社内をご案内させていただきます。まずは部品庫へいってみましょう!
加藤:襲撃しましょう(笑)
花岡:コネクターやステレオプラグなどが部品レベルで置いてあって、他にはコンデンサー、抵抗などの基板実装部品。あとは、つまみ、フェーダーなどですね。ボリューム関係は、最近はあまり作ってないんですけど、弊社の仕様の特注ボリュームもありますよ。
増田:ここの部品を使って作られているんですか?
花岡:そうです、部品はここの部品庫から取り出して使っています。基板を作る際には、部品の点数が何が何個必要かデータベースで分かるようになっていて、それが全部タックシールになって出力されます。シールには棚番が表記されていますのでそれを見ながら部品を集めて、それを協力会社に出して基板に取り付けてもらいます。
増田:ハンダとかを使ってですか?
花岡:そうですね、ハンダで取り付けていきます。けれど最近はチップ部品が増えたのでリールの状態になっていて、例えばこれは抵抗ですが、こうしたものを協力会社に出して機械で取り付けて貰っています。
上がリール状になっているチップ部品、下が従来からの形(いずれも抵抗)
増田:へぇ~(驚)
花岡:ええ、どんどんコンパクトになってきてます。
増田:ちょっ、ちょっと見ていいですか?!
加藤:この中に抵抗が入っているってことなんですか?
花岡:そういうことです。
増田:全然意味が分からない(笑)
どういうことなのでしょう、花岡社長?
花岡:いや~そこまでは分かんない(笑)
一同:(笑)
加藤:基板を見せて貰えませんか?
花岡:基板は例えばこういうものですね。先ほどのチップは使っていないのですが、これはインピーダンス変換パネルというものです。
インピーダンス変換パネル
増田:さっきのチップには驚きましたね~
花岡:これらの部品は全部データベースで管理をしています。部品検索というツールで部品名を入力すると、棚の位置や、在庫数、RoHS対応品か否かなど、詳細が分かるようになっています。何万点もの部品がありますからね。
加藤:今は手に入りづらい部品なんかもあったりするのでしょうか?
花岡:この部屋はRoHS対応品の部品庫なので、ここにある部品は比較的新しい部品が多いです。ちなみにRoHS対応品というのは禁止6物質、鉛、水銀、カドミウムなどを使っていない製品です。間違って非対応品の部品を使わないように部品庫を分けて混ざらないようにしています。
加藤:エフェクターにもRoHSの案内が貼ってあったりしますね。
花岡:ではRoHS非対応品の部品庫に行ってみましょう。
花岡:こっちの部品には本当に古いものがありますね。もちろん生産終了品もありますがメンテナンス用に色々あります。つまみなんかも、ごっついのがあったり。
増田:わ~
加藤:お宝が。。
花岡:お宝もあるかもしれないですね(笑)
加藤:管理が厳重ですね。(温度管理がされている)
花岡:基板なんかは湿気に弱かったりしますので、こうして管理は厳重にやっています。
花岡:この辺りの基板にチップ部品を使ったものがあったような…あ、これがそうですね!この中のちっちゃいやつです。
チップ部品使用の基盤
増田:へぇ~凄い!
加藤:これはデジタル卓に使用するものですか?
花岡:ええ、デジタル卓に使用するものです。デジタルアナログ変換の基板かな。ちなみに皆さんが想像されている基板はこんな感じのものだと思うんです。
増田:あ~
加藤:それは知っている形ですね。
花岡:そうなんです。これが部品の進化でどんどん小さくなっているんです。ではそろそろデモルームにいってみましょう!
Sierror!〽:お願いします!
花岡:通常デジタル卓ですと、コスト削減のためにフェーダーの操作パネルを1枚パネルで製作したりするんですけど、この卓はモジュール形式でひとつずつ抜くことが出来ます。そうすると何か問題が起こった場合、使っていない部分と差し換えるなどの対応で、弊社のサービスが到着するまで運用が可能になるわけです。アナログの良さを残した製品ですね。ちなみにフェーダーはオートフェーダーですのでレイヤーを切り替えると自動で動きます。
実際に使用して見せる
一同:お~!
花岡:タッチセンスという、静電気を感知することで人が触れた操作かどうかのチェックをおこなっているので、例えば爪ですとか、このボールペンですとか、静電気を通さないものでフェーダーに触れても、ほら、動かないんです。もちろんこの機能のON・OFFも可能ですけどね。
増田:操作を覚えるだけで大変そうですね!
実は本日Sierror!〽のお二人がCDを大量にもってきているんです(笑)
花岡:じゃあ是非かけましょう!(笑)
花岡:ちなみにこれは放送用のTASCAMのCDプレイヤーなんですが、色々な機能があって、例えばスタートさせたい場所をかなり細かく指定できるんです。ほら。
一同:お~!
グラム・パーソンズ“Return of the Grievous Angel”が流れ始める
名曲じゃないですか!
増田:いい曲ですよね~!
花岡社長、何気なくステレオから5.1chサラウンドに切り替える
エミルー・ハリスの立ち位置が分かるような気が!
増田:爆笑
花岡:そこの二人掛けのソファーがちょうどリスニングポイントですね。ちなみにスピーカーの操作もここで全部できます。リアだけにしてみたり、センターだけにしたり。お二人是非リスニングポイントに腰掛けてみてください。
花岡:はい、これがCDのもとの状態ですね。ではサラウンドに切り替えます。
増田:はははは!!
加藤:凄い!
いいリアクションですね(笑)
花岡:バーチャルサラウンドというのを試してみますか?
増田:勿論です!
花岡:はい、これがCDのもとの状態です。切り替えます。
ちょっと拡がりが出ますね。二人は完全に昇天してますが(笑)
花岡:(笑)臨場感が出ますよね。
増田:バーチャルっていうのは、どういうイメージで音を広げているんですか?
花岡:これがまさに最初にお話をした残響制御パネルを使用しています。残響制御で「跳ね返った反響音」をリアに持っていって5.1chサラウンドを作成するのですが、それを更にステレオバーチャルサラウンドにしているんです。難しい言葉ですが、頭部伝達関数というものを利用した技術なんです。
残響制御パネルを組み込んだラック
増田:へぇ~
花岡:錯覚をさせているんですね。スピーカーの数は変わらないわけですから。
増田:じゃあ加藤さん、そろそろノイズを…
一同:(笑)
加藤:ではJAZZ非常階段を。
ヤバいですね!
花岡:もうLRのメーターが振り切っていますね(笑)
しばし試聴…
増田:この機材はなんですか?
花岡:これはですね、ポン出し機といってジングルですとか、クイズ番組なんかの正解音をすばやく出す為の製品です。他にはラジオで次の曲は○○ですといって曲が流れますよね。それを予めここに登録しておくんです。
増田:あ~なるほど。
花岡:昔はメディアとしてはDATですとかMOを使用していましたが、今はCF(コンパクトフラッシュ)メモリーカードに変わってきていますね。
花岡:加藤監督、せっかくですから卓をさわってみませんか?
加藤:お願いします。
ではせっかくですからこの辺りでSierror!〽の音源を...
Sierror!〽を爆音で鳴り響かせつつ、花岡社長からレクチャーを受ける加藤監督
花岡:残響成分を取ってみましょう。これがもとの音、そしてこれが残響成分を取った音です。
加藤:ほぉ~
花岡:どこからを残響とするか、かかりぐあいなどもパラメータで調整が出来ます。
増田:どこからを残響とするかの基準は何かあるんですか?
花岡:ライブレコーディングで説明しますと、大きなホールですと音の跳ね返りに時間がかかりますし、小さなライブハウスですとその時間が短い。そこの差ですね。
ノイズミュージックから残響成分を取っちゃうと何になるんでしょうか?無になるとか?
加藤:無になる(笑)いや、ピュアになる?
一同:(笑)
ではお時間も迫ってきたということで、Sierror!〽のお二人に締めていただければと思います。
増田:え~加藤監督と私が花岡無線電機よりノイズミュージックをお届けするという体でやってきたんですが、加藤監督如何でしたか?
加藤:やっぱりいい機材で聞くと良く聞こえますね。
増田:そうですね~我々の音がこんなにも音楽的に聞こえるという。これは中々ほかじゃあ味わえない体験でしたねぇ。
加藤:魔法みたいだね。
増田:本当魔法ですねぇ。いや~素晴らしい機材でしたね~
加藤:ふぉっふぉっ
Sierror!〽で使ってみたい機材はありますか?
増田:残響制御パネルですね~
加藤:どう使うの?
増田:いや、良く分かんない(笑)
一同:(笑)
増田:分かんないですけど、我々リバーブを足す機材はいっぱいあるじゃないですか?それを取っちゃおうって言うんですから、これは新しいと言えば新しいですよ!
加藤:なるほど(笑)
増田:今まで足そう足そうと頑張っていたのを、取っちゃうわけですから(笑)
一同:(笑)
増田:正直何に使えるかアイデアはないですけど、いじってたら、あっ!っていう発見があるかも知れませんよ。
加藤:何か見えるかも知れないね。
増田:見えてくると思いますよ!カーネギーホール辺りで音録りしてきてリバーブを取ってみたい!
わざわざカーネギーで録音してリバーブ取っちゃうんですか(笑)
一同:(笑)
増田:(笑)それではこの辺りで花岡無線電機さんからお別れしたいと思います。花岡社長、本日はありがとうございました!
花岡:ありがとうございました(笑)
花岡無線電機株式会社、本社ビル前にて
Sierror!〽 (シエラ!)Live Information 
スケジュール
2013.8.18.Sun. 18:00~Open/Start
場所
HAMON STUDIO 大塚/池袋
会場URL
http://www.hamonstudio.com/
構成 :岡本英之
写真 :石川ひろみ
『Sierror!〽』

加藤(Feedback, Electronics)と増田(Gt.)で結成。

俗界を堪能しきった後、白神山地に引きこもり3年間ノイズと焚き火を繰り返している。

電気はペダルとアンプにしか使わないという生活のもとサヴァイヴァル。

たまに山から降りてきてノイズをシェアする。