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斎藤久志監督作品『なにもこわいことはない』

寡作ながら着実な作品を送り出している斎藤久志の7年ぶりとなる待望の新作は、日常のディテールを丁寧に描き、円熟した演出で普遍的な愛を描く。15年ぶりのタッグとなる石井勲のカメラが、何気ない風景に輝きを持たせ、要となる脚本の加瀬仁美は本作がデビュー作。熟練したスタッフと若手作家がひとつになり、美しい映画を紡ぎ出している。
以下、あらすじ。

ミニシアターに勤める恵理は、子供を持たず、夫の史也と二人きりで生活している。生まれてくる誰かの父と母になるのではなく、一生を互いの夫と妻であり続けようと決めたのだ。朝早く出勤する恵理のために史也はコーヒーを淹れ、夜遅く帰宅する史也のために恵理は温かい食事を作る。職場の苦手な上司のこと、愛犬の去勢手術、すくすくと育つベランダのゴーヤ、美しく咲いた朝顔の花、懐かしい母の訪問、友人の突然の死。喜びも悲しみも、恵理は史也と共有しようとする。毎日がゆっくりと積もるように重なり、層を成してゆく。そして、ある事態が、静かに、でも確実に、二人の当たり前だった日常にさざ波を起こす。

監督の言葉を借りると、“圧倒的な日常”の映画。このテンションのまま終わるのだろうかと最初心配になるくらい淡々と夫婦を観察している。そしてその通り、終始大きな波は立たない。だがグラス・ハープのような微動な波をずっと感じていた。 この映画がまとう独特の空気、生活であるのに生活の匂いがしないような。それは劇中で恵理が音読している宮沢賢治の「ひかりの素足」のように、どこか現世ではない雰囲気。夫婦の所作が、部屋のひかりが、まどの風が繊細すぎてこわい。“日常”ってこんなにこわいものだったか。寝る前や数日後にもふと思い出して、静かに揺さぶりかけてくる。見て見ぬフリをしていたものを見せられたんだ。でもこれはきっと思い出した方が良かったことなのだと時間がたってからわかった。

■公式サイト
http://kowaikotohanai.com/
■場所
新宿K’s cinema
その他、全国上映情報はこちら→http://kowaikotohanai.com/index.html#theater
■新宿K’s cinema初日舞台挨拶・トークショースケジュール
◆12月14日(土)≪13:00≫上映後舞台挨拶  斎藤久志監督、高尾祥子さん、吉岡睦雄さん、山田キヌヲさん
◆12月15日(日)≪13:00≫上映後トークショー  福間健二さん×加瀬仁美さん(本作脚本)
◆12月28日(土)≪17:20≫上映後トークショー  中原昌也さん
◆1月11日(土)≪17:20≫上映後トークショー  矢崎仁司さん
◆1月12日(日)≪17:20≫上映後トークショー  やまだないとさん
◆1月13日(月・祝)≪17:20≫上映後トークショー  七里圭さん
※すべての回に斎藤久志監督も登壇します。 ゲストは変更になる場合があります。
■料金
一般:1,700円/大・高:1,400円/中・小・シニア:1,000円
●リピーター割引あり 『なにもこわいことはない』半券提示で1,000円
 ※ユーロスペースの半券もご利用できます。
●夫婦30割 夫婦のどちらかが30歳以上の方は、ふたりで2,000円
 ※チケット購入時に年齢の証明できるものをご提示ください。
文: 石川ひろみ
『なにもこわいことはない』
製作/監督:斎藤久志/脚本:加瀬仁美/撮影:石井 勲/照明:大坂章夫/録音:小川 武/編集:鹿子木直美/音楽:小川 洋/キャスト:高尾祥子、吉岡睦雄、岡部 尚、山田キヌヲ、谷川昭一朗、柏原寛司、角替和枝、森岡 龍
公式サイト:http://kowaikotohanai.com/
  • 『斎藤久志(さいとう・ひさし)』
    高校生の頃より8ミリ映画を撮り始め、1985年、『うしろあたま』でPFF入選。スカラシップ作品『はいかぶり姫物語』を監督すると同時に審査員だった長谷川和彦氏に師事。92年、長崎俊一監督のTVドラマ「最期のドライブ」で脚本家デビュー。96年、『フレンチドレッシング』で劇場監督デビュー。2000年、舞台「お迎え準備」の作・演出を手掛ける。監督作品に『サンデイドライブ』(98)『いたいふたり』(01)など。脚本作品に中田秀夫監督『カオス』(00)、廣木隆一監督『M』(06)など。