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濱口竜介監督作品『親密さ』カフェモヤウにて岡山初上映!

濱口竜介監督作品『親密さ』が、東北三部作に続き岡山カフェモヤウにて上映となる。
ごくごく個人的なことだけれど、僕は岡山県出身で生まれも育ちも岡山で、大人と呼べる年齢となってからも、丸々3年半の期間を岡山で過ごしている。実際この『親密さ』の撮影中は岡山に住んでいて、ギターケースを担いで東京まで通っていた。
いつのことだったかはっきり思い出せないけれど、三宅唱監督と話していたら「友人が岡山でカフェをやっている」というので、詳しく聞いてみたらそれがモヤウで、お店の存在は知っていたから「じゃあ今度行ってみます」と、はじめてお店を訪ねたのが2012年の夏のことで、開催を控えた「濱口竜介レトロスペクティヴ」のチラシを片手に店主の阿久津隆さんに簡単なご挨拶をさせてもらい、バナナとみかんのシェイクを注文してのんびりした時間を過ごしたことを覚えている。
そんな話は蛇足に過ぎないけれど、単純にモヤウでの『親密さ』上映を血の通った情報としてお伝えしたいと思っていて、そのためにはやはり以下に転載する阿久津さんによる上映に向けた文章を読んでいただきたいと思うわけで、こうした動き、動きなんていうとお硬い表現になってしまうけれど、それらはある日突然に起こるはずもなく、そこには上映時間を遥かに超えた物語が存在していて、そのことにひたすら心を打たれる。
岡本英之

日本映画の最前線・濱口竜介監督の代表作が一週間にわたって岡山初上映

2012年、オーディトリウム渋谷における二週間のレイトショー上映で1500人を動員した「濱口竜介レトロスペクティヴ」から始まり、2013年、京阪神5館で展開された「濱口竜介プロスペクティヴin Kansai」と「濱口竜介プロスペクティヴin 広島」、そして2014年3月の「濱口竜介プロスペクティヴin Tokyo」と、現在日本の映画ファンから最も求められ、そして見る機会の極めて限られる映画作家・濱口竜介。

先日の「東北記録映画三部作」に続き、濱口竜介の代表作とも言える『親密さ』が4月、岡山で初上映される。

どんな枠組みの中でなら、私たちは他者と真摯に向き合うことができるのだろうか

本作では、誰かが誰かに言葉を届けるための数々の枠組みが差し出される。手紙、詩、スカイプ、インタビュー、電話、メール、そして演劇…… また、その中ではおびただしい数の言葉が発せられるだろう。誰かが誰かに向けた言葉は往々にして届かなかったり、素通りしたり、意図した以上に相手を傷つけたり、間違って受け取られたりする。それでもなお、彼らは悪あがきのように、祈りのように言葉を発し続ける。
真に他者と向き合うためにはどうすればいいか、真に他者と親密な関係を築くためにはどうすればいいか、その問いに対する答えはこの映画の中にはないかもしれない。だけど、彼らの葛藤と苦闘の時間を見つめ続け、彼らの時間がふいに私たちの時間と重なるような、そんな瞬間を経験することで、よりよく生きるための小さな一歩、あるいはその勇気を、私たちも得ることができるかもしれない。
255分。きっと特別なものになるであろうこの時間を、ぜひ多くの人に体験してほしい。
以上がフライヤーに記載した文章であり、以下、またうだうだと書いてみる。詳細はこちら

『親密さ』は、よりよく生きようとする人すべてに向けられた映画だ

これはモヤウ主催の初めてのイベントだ。

初めての主催イベントを『親密さ』の上映、しかも一夜限りとかではなくて一週間、という形でおこなえることに、僕は今とても興奮している。

なぜ、この映画を上映することに興奮を覚えるのか。なぜ、多くの人に見てほしいと思っているのか。
「一つの映画が自分に与える影響として、『親密さ』ほどアクチュアルなものは今まで僕の人生においてなかったのじゃないかとすら思います。僕にとってあの映画を見る体験は、よく生きようとすることについて考えることとイコールになりました。

なんというか、人生を生きることにとって、この映画は必要だ、と僕は思ったんです。岡山の人にもこの映画を見てほしい、いやむしろ見るべきだ、そういう自分勝手な思いから『親密さ』を上映したいと考えています。」

これは、昨年末に濱口監督に送った、上映させてくださいのメールに書かれた文章だ。

実に青くさいなと思うのだけど、実に率直なことを書いたなとも、今読んでみても思う。

『親密さ』は、僕にとってはこういう青くさく率直なことを言わせる映画だ、青くさく率直で、切実なことを言わせる映画だ。

「よりよく生きようとすること」なんて切実さの骨頂で、ふだん映画を見て僕はそんなふうに考えることはまずない。かっこいいなとか、たいへんワクワクしたなとか、いい顔だなとか、感動したなとか、そういうことは考えこそすれども、よりよく生きたいだなんて、そんなふうに開くようにはこの口はできていない。

だけど『親密さ』は違った。僕はこの映画で語られる言葉、その際に用いられた枠組みを材料にして、会う人会う人に、ほとんど議論をふっかけるみたいにして話しまくった。こんなことは本当になかったことだった。

ここに登場する演劇学校の生徒たち、彼らが演じる演劇の登場人物たち、彼らの口からはおびただしい言葉が発せられて、様々な立場の彼らが発する言葉の入り口、出口、遅さ、速さ、弱さ、強さはまったく多様で、それらの言葉はすれ違ったりぶつかったりして、何かにおさまりよく回収されそうな気配はない。彼らに唯一共通しているのは、とにかくよりよく生きるために苦闘している、というその態度だ。よりよく他者と関係を結ぶために苦闘しているというその態度だ。より率直に、より倫理的に、より確かに、より親密に、他者と関係を結ぶために苦闘しているというその態度だ。

僕はたぶん、この時代錯誤とすら思えるほどに真面目な言葉の交換のドラマに打たれたのだろうと思う。

ここには、徒党を組んでくだらないゴシップを口から垂れ流して溜飲を下げるような、空気を読んでうまいことを言ったら完結するような、そんな時間とは対極の時間がある。

作中でも「イタい」という言葉が出てくるけれども、ある種のイタさとか、寒さとか、それは青くささでもいいし生真面目さでもいいし愚直さでもいいしなんでもいいのだけど、そういったものをこの映画から感じる人もきっといるだろうと思う。でもそのイタさを直視し続けることで浮かび上がってくるすごく大切なものがあるんじゃないだろうかと、僕はこの映画を見て強く感じた。むしろそのイタさ、言えないよね、普通、こんなこと、というようなフィクショナルな言葉のうちにこそ、ものすごく大切なものが宿るのではないのかと。そういう言葉に乗せてでしか届けられない思いがあるのではないかと。ある種の枠組みの設定がその発語を助け、勇気づけるのではないかと。

人の真剣な挑戦とか前進への意志とかをイタいとか寒いとか言ってヘラヘラ笑うだけしかできない類の人にはこの映画は向けられていないだろうし、そういう手合いは一生イタがったり寒がったりしていればいいと僕は思うのだけど、そういう連中は痛さと寒さに震えて眠りにつけばいいと思うのだけど、そうではなく、何かしら、少しでも、真剣にありたいと思う人、よりよく生きたいと願う人、現実と格闘している人、その格闘に疲れてきた人、ちょっとこれ、こういう思い的なものって、ふだん人には簡単には言えないよね、言いたいけど、みたいなところがある人すべてに、ぜひ見てほしいと思っている。何か、なんかすごいわかんないけど何か大切なことが、この映画の中にあると僕は確信している。

『ムーンライズ・キングダム』『ゼロ・グラビティ』『ジャンゴ 繋がれざる者』を抑え、堂々の1位を獲得!

なんかこう、非常に安っぽい惹句というか宣伝文句だなというのはとても自覚はしているのだけど、「そこまで言うなら」層がいたらいいなとか思ってこうういう見出しを付けてみたのだけど、これは何かといえば僕の私的なランキングで、2013年に見た108本の映画のなかでもっともよかったんですよという話。つまり何が言いたいかといえば、普段映画をほとんど見ない方、仮に今年一本しか映画を見ないのであれば、その一本は『親密さ』で間違いないんじゃないですか?どうですか?という提案です。映画を見る見ないは趣味の問題だからなんでもないけれど、映画「だから」これを見ないというのであれば、それはものすごくもったいない気がするのです。

上映環境としては、隔離された地下室とは言えトイレへの階段の足音とかは聞こえてきちゃうだろうし、横の路地を人が歩けばそれも聞こえるかもしれない、スクリーンだって小さい等、恵まれないというか至らないところもたくさんあるのだけれども、そういうもろもろの弱さを補って全部お釣りが来るぐらいのものがあるはずなので、ぜひ、とか、またウダウダ書きだしそうなのでここでやめにします。

僕の個人的な熱帯び文章だけじゃあ、というところもある気がするので、たくさんの人々の声を、ということで次のリンクを紹介して終わります。2012年のレトロスペクティヴのときの『親密さ』への反応がまとめられたものです。

・『親密さ』上映後の反応(@濱口竜介レトロスペクティヴ)  http://togetter.com/li/350213
これ読んでいるとまた見たくなる。昨夏の京都・立誠小学校で初めて見、激しい衝撃を受け、この3月にも東京滞在7時間という強行日程で渋谷にオールナイト上映を見にいってきたのだけど、見たばっかりだけど、また見たくなる。まだまだ何度でも見たくなる。
カフェモヤウ・阿久津隆
■日時
4月19日(土)〜25日(金) ※23日(水)休映
13:00〜 18:00〜
各回定員20名程度(予約優先)
■会場
カフェモヤウ
岡山市北区出石町1−10−2
■料金
一般:1500円
学割:1200円
■予約・問合せ
カフェモヤウ
086-227-2872
info@cafe-moyau.com
『親密さ』
2012年 / 255分(途中休憩あり)/ HD(Blu-ray上映)/ カラー

製作:ENBUゼミナール / 監督・脚本:濱口竜介 / 撮影:北川喜雄 / 編集:鈴木宏 / 整音:黄永昌 / 助監督:佐々木亮介 / 制作:工藤渉 / 劇中歌:岡本英之

出演:平野鈴、佐藤亮、伊藤綾子、田山幹雄 ほか
ともに演出家であり、恋人同士でもある令子と良平は互いに傷つけ合いながら舞台劇『親密さ』初演を迎える。
4時間を越える大作だが、ENBUゼミナールの演技コースの修了作品としてスタートした企画である。映画と映画内の舞台劇の関係においてだけでなく、それぞれの中でも、現実と虚構が複雑、微妙に交錯し続け、虚実の彼岸にあるリアリティーの核心が胸を揺さぶる。美し過ぎるラストが、岡本英之の音楽とともに脳裡に焼き付く。
作品解説:木村建哉 (映画研究者)
  • 『濱口竜介(はまぐち・りゅうすけ)』
    1978年、神奈川県生まれ。2008年、東京藝術大学大学院映像研究科の修了制作『PASSION』がサン・セバスチャン国際映画祭や東京フィルメックスに出品され高い評価を得る。その後も日韓共同製作『THE DEPTHS』(2010)、東日本大震災の被災者へのインタビューから成る映画『なみのおと』『なみのこえ』、東北地方の民話の記録『うたうひと』(2011~2013/共同監督:酒井耕)、4時間を越える長編『親密さ』(2012)を監督。2013年からは神戸に居を移し「即興演技ワークショップ」を9月から開催。精力的な制作活動を続けている。最新作は『不気味なものの肌に触れる』(2013)。
  • 『阿久津隆』
    cafe moyau店主
    www.cafe-moyau.com
    1985年生まれ。埼玉県大宮市出身。現在岡山県岡山市にて恋人とカフェを営む。