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劇作家・宮沢章夫が語る!『罪の手ざわり』

今の中国の問題を見据えながら、新たな視点を提示するジャ・ジャンク―の映画

映画のご感想は?
宮沢 「暴力」がこの映画の全体的なテーマになっていると思うんだけど、映画における暴力って何なのかってことを改めて考えたんですよね。映画にとって暴力は魅力的なのか、血が出るってことは映画的なのか、なんてことを考えていて。僕はふだん演劇をやっていて、まず演劇では暴力を使っても嘘になりますからね。毎日殴っていると大変なことになる(笑)。

暴力を映画的だからといって簡単に描くのではなくて、その暴力の背景や、人間をどうやって描くかということからこの映画は積み上げているからこそ、暴力の、例えば銃の音であるとか、ナイフで刺すという行為に説得力があるのではないかと思います。
監督も、「どうして普通の人々がそういった暴力に走ってしまったか」というところが出発点だと言っていましたね。
宮沢 中国映画をたくさん観ているわけではないので、実際にあった事件を犯罪者の側から描くということが、中国でどのように捉えられているか分からないんだけれども、日本でも、『裸の十九才』(新藤兼人監督)は永山則夫の側から、社会を告発するようなテーマとして描かれた、と思うんです。僕はそういう映画に共感するところが強くあったし、大島渚監督も犯罪者の視点から、「なぜ彼は犯罪を犯すか」という社会に対するある抵抗を感じさせるところがある映画を撮っていました。


日本ではある時期から被害者の問題というのが大きく取り上げられるようになった。加害者の身になってみる、ということよりは、自分の家族をどうやって守るか、ということに重心が置かれるようになってしまった。それは犯罪報道なんか見ててもそう感じる。そしてむしろそのことによって、社会の陰の部分が隠蔽されているんじゃないか。もちろん被害者の問題というのは大きくあります。社会がある暴力性を持っているとしたら、加害者がどんな動機を持っていようと、加害者の痛みを僕らは知る必要があるかもしれない。ただ、それをバランスよく考えた時に、社会や表現というのは出現するであろうはずだと思います。今はそれが被害者側に寄り過ぎているのではないか。なので、『罪の手ざわり』は、そういった最近のマスコミの考え方とは違う視点を持った作品としての面白さ、というのが一つあると思います。


もう一つは、シナリオが、オムニバスでありながら、全てが上手く繋がっていく。一人の人間の後ろにもう一人の人間が通ったとしたら、そっちにカメラが移動する、みたいなことだと思うんですけど。移動することによって別の話に繋がっていくという作り方が、僕はとても好きでした。それは地図を書くような行為ではないだろうか。一つの大きな地図の中で、ここを描いて、次はここを描く。細部を描くことによって全体を描き出すということではないか。

実際中国はすごく広くて、職を求めて移動し続けて、という動きも映画の中には捉えられているし、それでパノラマを描こうとしたと監督も言っていました。
宮沢 民族もかなり様々な民族が描かれている。少数民族の問題がニュースになるような状況のなかで、それを捉えるということは、今の中国の突出した監督だな、と思いました。


(取材・文=夏目深雪)
【STORY】

村の共同所有だった炭鉱の利益が実業家に独占されたことに怒った山西省の男。妻と子には出稼ぎだと偽って強盗を繰り返す重慶の男。客からセクハラを受ける湖北省の女。ナイトクラブのダンサーとの恋に苦悩する広東省の男――。 彼らが起こす驚愕の結末とは?ごく普通の人びとである彼らはなぜ罪に触れてしまったのか?中国でここ数年に実際に起こった4つの事件を基に、急激に変貌する社会のなかで、もがき苦しみながらもひたむきに生きる人たちをパワフルかつセンセーショナルに描く濃厚な人間ドラマの傑作が誕生した。
『罪の手ざわり』
5/31(土)よりBunkamuraル・シネマほかにて上映中!
■公式サイト
http://www.bitters.co.jp/tumi/
『罪の手ざわり』
監督・脚本:ジャ・ジャンクー
出演:チャオ・タオ、チァン・ウー、ワン・バオチャン、ルオ・ランシャン
中国=日本/129分/2013年
配給:ビターズ・エンド、オフィス北野
(c) 2013 BANDAI VISUAL, BITTERS END, OFFICE KITANO